Aug. 30 - Sep. 3, 2007 Yokohama Japan
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事務局 > 誘致委員会時代の資料 > 「ワールドコン日本」開催趣意書

■「ワールドコン日本」開催趣意書

ワールドコン日本誘致委員会
委員長 井上博明


SF、空想科学小説やサイエンスフィクションとも呼ばれるこの分野は、古来から人類が抱いてきたアイデアやイマジネーションを源泉とし、連綿と受け継がれてきた歴史を持つ表現活動です。

 今世紀の初頭、ウェルズやベルヌ、ポー等巨匠たちの登場によって確固たる基礎を見出したSFは、やがて世界の各地に広がり、特にアメリカでは作家にして編集者であったガーンズバックによりSF専門誌「アメージング」が創刊され、大きな盛り上がりを見せることになりました。

 我が国でも、明治期には海外のSF小説が多数翻訳され科学啓蒙の助けとなるとともに、矢野龍渓や押川春浪などが意欲的なSF作品を発表しています。また、昭和初期に現れた海野十三によって本格的なSFの分野が確立し、戦後も多くの優れた作家が生まれました。

 こうした優れた表現活動が盛んになるに従い、それを愛好する人々の数も増大していき、SFのファンたちは互いに連絡を取り合い、次第に連帯するようになりました。

 そして1936年10月22日、アメリカのフィラデルフィアで世界初のSFコンベンションが開催されることになります。コンベンションというと何か堅苦しい雰囲気ですが、ここで言うSFコンベンションは、さまざまな企画、パネルディスカッションや講演、交換会等が多数開かれ、参加した人すべてが楽しむことができるSFの祭典とも言うべきイベントなのです。

 こういったSFコンベンションが各地で開催され、徐々に周囲の人々から認知されていく中、ニューヨークで開催される万国博覧会に合わせて、世界的なSFコンベンションを開こうという人々が現れます。

 そして1939年7月2日、マンハッタン地区のキャラバン・ホールにおいて、第1回世界SFコンベンションが開催されました。このコンベンションには当時のSF作家も多数参加し、プロもアマチュアも共にSFを楽しもうという精神が生まれました。これは他の文学ジャンルではあまり見出す事の出来ない特色、つまりファン同士の連帯が強いばかりではなく、作家とファンとの間も非常に緊密であるという独特の文化を育むことになります。世界SFコンベンション=ワールドコンは、太平洋戦争中の数年をのぞき、その後も毎年開かれ、ヨーロッパやオーストラリアでも開催されています。

 一方、日本におけるSFファン活動は、1957年に柴野拓美氏が、後にプロ作家を多数輩出することとなる日本最初のSF同人誌「宇宙塵」を創刊して以来、現在に至るまで盛んに行われています。1962年5月には、アメリカのSFコンベンションに刺激を受け、第1回日本SF大会が東京の目黒で開催されました。星新一氏や小松左京氏、手塚治虫氏なども参加され、プロとアマチュアの交流が行われると共に、こうしたコンベンションが日本でも行われる先駆けともなりました。以来、日本SF大会は年に一度開催され、それ以外のコンベンションも日本各地で多数開催されるようになりました。

 ワールドコンへの日本からの参加者は、戦後の海外渡航が自由化されていない時代に、アメリカのファン有志からの招待で参加した矢野徹氏や、同じく海外交流資金で行かれた柴野拓美氏の時代から、最近ではアメリカ西海岸の大会では200人以上の参加者を数えるまでになりました。

 そして2000年、新たな世紀を迎えようとする現在、日本のSFファンの活動は世界的な広がりを見せています。地道に海外のファンと交流を重ね、多くの日本人が海外の各種SFコンベンションに参加していますし、SFに影響を受けた日本のクリエイターが海外で高く評価され、国際的にも日本のSFに対する興味が年々大きくなってきています。

 しかし、言語や地理的な制約もあり、日本のSFが充分に海外に浸透しているとは言えません。積極的に紹介する機会にも恵まれませんでした。こうしたことが非常に困難で、時間がかかることは当然なのですが、日本のSFを広く世界に紹介することは、我々日本のSFファンにとって有意義なことであると共に、海外のSF作品やSFファンが与えてくれた多くの恩恵に対して、感謝の意を表すことにもなると考えます。

 ワールドコンの日本開催を、日本のSFを世界に広めるという、大きな目標の第一歩にしたいと思います。ワールドコンというイベントが、世界中のSFファンの日本に対する理解を向上させ、そこから新たな国際交流や人材の発掘が生まれ、大きな収穫になることは間違いありません。

 世界はテクノロジーの発達によって、ますます身近なものになろうとしています。そうした世界の未来や夢を語ってきたSFファンたちが、日本で互いに交流し合うことは、さまざまな新しい試みや結びつきにつながっていくことでしょう。

 ワールドコンの日本開催は、そうした歩みの中で、確実に記憶に残るものにしたいと強く願っています。





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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